植物感染性線虫の誘引物質の同定に成功 ―年間数十兆円の農作物被害がある線虫のトラップ剤開発にはずみ―(大学院理工学研究科 小竹敬久教授 共同研究)
2021/7/5
概要
熊本大学大学院先端科学研究部附属生物環境農学国際研究センターの澤進一郎センター長、Allen Yi-Lun Tsai助教、千葉大学大学院薬学研究院の石川勇人教授、埼玉大学大学院理工学研究科の円谷陽一教授、小竹敬久教授、東京農業大学生命科学部の伊藤晋作准教授、琉球大学農学部の小西照子教授の研究グループは、農作物に被害を与えるサツマイモネコブセンチュウの誘引物質の精製?単離?同定に、世界で初めて成功しました。
線虫は、線形動物門に分類される、その多くが体長1 mmにも満たないような小さな生き物です。その種類は、生命科学研究におけるモデル生物として非常に重要なC.elegans(シー?エレガンス)、アニサキスのような動物に感染する動物感染性線虫、植物に感染する植物感染性線虫など、1億種類以上存在するとも推定されています。中でも大きな問題となっているのが、土壌中に生息し、作物の根などに寄生して農作物を枯らしたり、商品価値を奪ったりしてしまう植物感染性線虫です。その被害額は、世界で年間数十兆円になると試算されています。
昔から、トマトやイネなどの様々な植物の根に線虫が寄生することは経験的に知られていました。これまでに、根そのものだけでなく、ジャガイモ等の根の浸出液にも、その濃度勾配にしたがって線虫が誘引されることが知られていましたが、その実体は明らかになっていませんでした。
今回、本研究グループは、サツマイモネコブセンチュウと亜麻の種子を用いた実験により、亜麻種子にも線虫誘引活性があることを明らかにしました。また、亜麻種子の浸出液を精製し、細胞壁成分である「ラムノガラクツロナン-I (RG-I)」に線虫誘引活性があることを明らかにしました。RG-Iは、様々な糖が様々な形で繋がった複雑な多量体(ポリマー)を形成しており、植物種や植物の組織ごとにその構成糖成分が異なることが知られています。RG-Iをさらに詳しく調べたところ、「ラムノース」と「L型ガ