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植物が水環境を感知する仕組みを解明?乾燥と冠水の両方に対応可能な作物育種に期待?(大学院理工学研究科 竹澤大輔教授 共同研究)

2021/11/19

研究のポイント

?植物が水利用環境の変化を統合的に感知する遺伝子を発見
?この遺伝子は植物ホルモンのシグナル伝達を制御する
?乾燥と洪水どちらにも対応可能な作物育種に期待

概要

地球温暖化は、日照りによる干ばつと洪水による冠水が同じ地域で引き起こされる可能性を高めることが知られており、農業生産への影響が懸念されています。学校法人東京農業大学大学院生命科学研究科の坂田洋一教授と埼玉大学大学院理工学研究科の竹澤大輔教授を中心とする共同研究グループ*1は、乾燥にも冠水にも対応可能なコケ植物に着目し、植物が乾燥と冠水という極端な水利用環境の変化を統合的に感知し、生存に最適な応答を導く遺伝子を明らかにしました。この遺伝子は作物を含め陸上植物に共通して存在することから、本研究成果は乾燥と冠水どちらにも柔軟に対応し、その回復力を高めた作物の育種への応用が期待されます。

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本研究はJSPS科研費(18H04774および19K06713) の助成を受けたものです。
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本研究成果は、米国科学雑誌「カレント?バイオロジー」(電子版)に掲載されました。

*1研究体制
東京農業大学大学院生命科学研究科
坂田洋一教授、太治輝昭教授、四井いずみ助教

東京農業大学大学院農学研究科博士前期課程
鳥山士(当時)

東京農業大学生物資源ゲノム解析センター
篠澤章久研究員

東京農業大学大学院農学研究科
馬場正教授および吉田実花助教

埼玉大学大学院理工学研究科
竹澤大輔教授、博士後期課程 猿橋正史(当時)、博士前期課程 平出真由佳(当時)

東京農工大グローバル教育院
安村友紀講師

北海道大学大学院農学研究院
松浦英幸教授、博士前期課程 伊藤詩織(当時)

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所
桑田啓子特任助教(当時)

研究背景

近年、地球規模で起こる極端な気候変動が大規模な干ばつの発生や、洪水による冠水を引き起こし、農業に深刻な影響を与えています。また気温の上昇は、同じ地域において「雨の降らない日照りの日々」と「長く降り続く雨」の両方を増加させることが知られています。これまで、水の利用が制限される「乾燥」と植物体が水没する「冠水」という、両極端な水環境への植物の応答機構はそれぞれ独立に制御されていると考えられてきました。乾燥応答は、主に植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)注1を介して行われ、冠水応答は植物ホルモンであるエチレン注2を介して行われることが知られています。

研究グループでは、乾燥と冠水に繰り返し晒されるコケ植物(ヒメツリガネゴケ:図1)に着目し、この両極端な水利用環境情報を統合し生存に最適な応答を導く仕組みの解明に取り組んできました。これまでの研究において、乾燥と冠水の両応答に関わる因子としてRAFキナーゼ注3を見出していました。しかしながら、RAFキナーゼが水環境に応じてABAとエチレンという2つのシグナル伝達系の切り替えをどのように制御するのかについては不明でした。

研究成果

今回、研究グループは、バクテリアにおいて環境センサーとして働くヒスチジンキナーゼ (HK)注4と類似した構造を持つエチレン受容体型ヒスチジンキナーゼ (ETR-HK)が、RAFキナーゼと小胞体で相互作用し(図2)、エチレンにより制御される冠水応答のみならず、 ABAにより制御される乾燥応答をも制御するマスター因子であることを明らかにしました。ヒメツリガネゴケが持つ4つのエチレン受容体型ヒスチジンキナーゼ遺伝子を遺伝子ターゲティングにより破壊した形質転換体 (HK QKO)では、エチレンが制御する冠水応答が恒常的に活性化され、一方で、ABAが制御する乾燥や浸透圧ストレス応答を消失することが明らかとなりました(図3)。RAFキナーゼはABAに応答して、その自己リン酸化活性により自身のセリン残基をリン酸化することにより活性化しますが、遺伝子破壊株ではこのリン酸化が消失することが示されました(図4)。以上の結果から、これらのヒスチジンキナーゼはRAFキナーゼと複合体を形成し、RAFキナーゼの自己リン酸化活性の調節を通じて、水環境情報を統合し生存に最適な応答を引き起こすセンシングユニットとして働いていると結論付けました(図5)。

今後の展望

地球温暖化により引き起こされる極端な気候変化は、干ばつや洪水の頻度を増加させ、農業へ深刻な影響を与えると予測されています。本研究により、植物には冠水と乾燥という、相反する水環境情報を統合する機構が存在することが明らかとなりました。同様の遺伝子は作物にも存在することから、ゲノム編集等を用いて、干ばつと洪水に柔軟に対応し、高い回復力を有する作物育種への応用が期待されます。

掲載論文情報

タイトル Sensor histidine kinases mediate ABA and osmostress signaling in the moss